世界がもし 1000 人の忠実なファンだったら
この物語はフィクションですが、実在する複数の事例をもとに構成されています。
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まだスケールの小さなスターが「ぼくには既に 1000 人の忠実なファンがついている。みんなが毎月 500 円を支払ってくれたら、毎月 50 万円になるから、税金や経費を差し引いてもクリエイティブな活動だけで生活できるようになるのになあ」と思っていました。
小さなスターは、さっそくオンラインでファンコミュニティを立ち上げて月額 500 円のプラン(上乗せあり)を用意しました。
1000 人のファンのうち 200 人は 18 歳未満で、クレジットカードを持っておらず、コミュニティに入れませんでした。
他の 300 人は 18 〜 25 歳でしたが、その年代のクレジットカード保有率は 67% なので、99 人はコミュニティに入れませんでした。 クレジットカードを持っている 201 人のうち、31% は Visa でも Master でもないクレジットカードだったので、決済がうまく通らずコミュニティに入れませんでした。
300 人のうち、コミュニティに入れたのは半分以下の 138 人でした。
400 人は可処分所得の少ない 25 歳以上で、クレジットカードの保有率は 84% でした。
クレジットカードを持っている人のうち、ほとんどは Visa か Master を一枚は持っていたので、だいたい 300 人がコミュニティに参加できました。
100 人は可処分所得の多い 25 歳以上で、すべての人がクレジットカードを持っていたので、みんなが +500 円の上乗せを行いました。
結果的に全部あわせて毎月 319,000 円と、当初のもくろみより少ない金額でしたが、小さなスターはこれだけ多くの人が自分をサポートしてくれたことに感謝と満足をしていました。
その数日後、ファンコミュニティプラットフォームを運営している会社から小さなスターにメールが届き、そこには「319,000 円の支援があったので、サービス利用料の 20 % を差し引いた 255,200 円が次回に振り込まれます」と書かれていました。
文面の中には「20% は決して法外な手数料ではなく、通例では 30% を取るところを、弊社では 20% と低く抑えているのです」というアピールも含まれていました。
小さなスターはこの顛末をファンに伝えました。
「今回サポートしてくれた人たちにありがとう」
「お金がない人は無理して支援する必要はないから気にしないでね」
「自分にとってはとても大きな金額をもらえたので、これからもっと良いものを作ることに時間を使えるようになるよ」
「本当は倍くらいの金額が集まったら、バイトを辞めてこっちに専念できたんだけどね」
それを聞いた一人のファンが小さなスターに DM を送りました。
「今回集まった金額と同じ額をあなたの口座に振り込むので口座番号を教えてください。わたしは石油王ではないため、いつまで支援を続けられるかわかりませんが、本当に好きなもののためにこれまで貯金をしてきました。そのお金は今使うべきときだと思っています」
突然の DM に小さなスターは驚き「そんな大きな金額を一人から受け取るわけにはいきません。あなたが稼いだお金はもっと大切に使うべきです」と返信しました。
一人のファンは「わたしにとって一番大切なものにお金を使っているつもりです。受け取ってもらえないのであれば、毎月 20 万円の上乗せをします。中抜される分がもったいないですが仕方ないです」と返し、実際にその月から 20 万円分の上乗せが増えました。
ファンの決意は固いと悟った小さなスターは「仕方ない。では、あなたからお金を借りることにしましょう。いつかぼくがビッグなスターになったときに必ずお返しします」と DM を送り、一人のファンは「返す必要はありませんが、そういう形が良いのであればそうしましょう」と返事をしました。
かくして小さなスターは毎月じゅうぶんなお金を手にしてクリエイティブな活動に打ち込めるようになりました。
その後、小さなスターはバイトを辞めたのでしょうか?
一人のファンはいつまでもお金を渡し続けたのでしょうか?
未来の話は誰にもわかりません。
ただ、誰かの活動がファンの支援によってずっと続けられるのだとしたら、なんて素敵な話なんでしょうね。