ズボンを買った
ちょっといいお値段のするズボンを買った。
その名も TEATORA WALLET PANTS packable。
というのも、ドラえもんを読み返していたら十一巻収録の「自動販売タイムマシン」の回で、百年後の未来のお菓子が一箱で二十三万円もしたので、貯金なんて意味ないし、今すぐお金を使ったほうがいいと思ったからである。
しかし、生活家電やガジェット類についてはもう一通り揃ってしまっているのでこれ以上展開しようがない。
わが家にはタブレットが十枚くらいあるが、これ以上枚数を増やしたところで生活が変わらないのは明確である。
数少ない趣味であるマンガも、稀覯本にそれほど興味はないし、そういった趣味以外のところで買い物をしようと思ったわけだ。
そうなると、やはり買うものは衣服である。
魚豊先生もインタビューで「洋服を着ることは社会的な行為で、そこには客観性やメッセージが含まれている」と言っていたし、俺も社会的な行為によってメッセージを伝えるしかないのだ。
TEATORA というブランドは最近知ったのだが、公式サイトには「人類の有史以来、座って働くということがこれほど一般的になった時代はありません。しかし、椅子と人体の間に長時間挟まれることとなったボトムスは、スラックスが生まれ、ジーンズが生まれた、あのころの機能のままです。テアトラは、現代クリエーターのためのワークウェアメーカーです。」ということが書かれており、なるほど俺はクリエイターかどうかは定かではないが、常に椅子に座りっぱなしであることは間違いない。
デスクワーカー向けというコンセプトもいいし、機能的でありつつもシンプルな見た目が好みだ。
さらにシルエットと生地のパターンの組み合わせでラインナップが存在しているのも、BTO モデルっぽくてガジェット心をくすぐる。
ということで、サイトを見た翌日には取扱店である表参道ヒルズの THE TOKYO へ向かい、ラインナップのうちのいくつかのバリエーションを見せてもらって、タイトすぎずルーズすぎず、生地感も好みの packable のモデルがいいなと感じ、金四万四千円也を支払って購入したというわけだ。(パックする予定は一切ないが)
表参道ヒルズのようなファッショニスタの集いし場所にはとんと縁がないが、まさかスウェットで行くわけにもいかず、手持ちの服で一番良さそうなものを着て場馴れ感を出そうとしたが、緊張のあまり会計待ちのときに出された水をこぼすなどの失態をかましてしまったため、ただ四万四千円の会計にビビっている人間が一人誕生しただけであった。
とにかく目当てのものが購入できたわけだから良しとしよう。
家に帰って買ったばかりのズボンに足を通し、椅子に座ったり立ったりしてみる。
うーん、いいじゃない。
服飾に詳しくないので何がどういいのかは表現できないけれども、悪くないというより良さそう寄りだ。
サイズもちょうどよくて試着したときの俺の判断は正しかった。
そして試着したときには気づかなかったけれども、ポケットにモノを入れて座っても邪魔くさくならないようにうまい具合に設計されている。
なるほど万人に向けた量産品ではなく、明確なターゲットを持ってものづくりをしているドメスティックブランドというのは、個人開発のウェブサービスに近い良さがあるのだ。
それから数日間、TEATORA を履いて家にいたり外に出たりしたけれども、ちょっといい服を着るということは、ちょっと自分に意識を向けることなのだなと思った。
基本的に自分の服は、最低限小綺麗であればまあええやろという感じでハイコスパの都市型迷彩みたいなものを選んできて、そのせいでユニクロとか無印良品で店員に間違われることがあったのだけれども、ある程度気合の入ったものを選ぶと自分に意識が向く。
いい服を着る人というのは、自分に意識が向いているからいい服を着ているのかと思っていたけれども、もしかするとそれはたいていの人にとっては逆で、いい服を着ているから自分に意識が向いているのかもしれない。
これが「洋服を着ることは社会的な行為で、そこには客観性やメッセージが含まれている」ということなんですね、魚豊先生。
しかしこんな値段のする服を今まで一度も買ったことがないから、もし煙草の灰でも落として穴が空いたら半年くらい立ち直れなさそうである。
禁煙しようかな?